「SYNTHETICTIMES=合成時代」媒体中国2008レポート
2016年のオリンピック開催候補地に東京が残っているが、オリンピックのプレイベントとしてメディアアートの展覧会が開かれることが東京でありえるだろうか?
北京ではオリンピックの文化イベントとして大規模なメディアアート展「SYNTHETICTIMES - Media Art China 2008(媒体中国2008)」が6月10日から7月3日まで中国美術館で開催されている。メディア芸術祭が上映されることもあり、開幕式と内覧会に出席したので簡単にレポートしたい。
中国における現代美術の活況には見張るものがあり、フランスの美術情報サイト「artprice.com」によると、市場規模はアメリカ、イギリスに次いで世界で3番目にまで成長してるそうだ。
メディアアートに関しても欧米の有力フェスティバルの巡回展を中心に増加している。昨年8月には「文化庁メディア芸術祭上海展」、秋には北京と広州で「美麗新世界:当代日本視覚文化」展など、日本主導のメディアアート展も人気を集めている。
「SYNTHETICTIMES=合成時代」と名づけられた今回のメディアアート展は、主催が中国唯一の国立美術館である中国美術館であり、実行委員会会長は中央美術学院のファン・ディアン教授、アーティスティックディレクター/キュレイターにはザン・ガー氏と、主催、企画、運営の3つとも中国自らが担っており、このような形態での開催は私が知る限りにおいては初めてである。
6月9日の午後5時から始まった開幕式には500名を超える人たちが集まりとても盛大。来場者の顔ぶれも国際色豊かで、アメリカ、イギリス、オーストリア、オランダ、カナダ、スイス、ドイツ、韓国、日本などからアーティストや、キュレイター、リサーチャー、メディアアートセンターやフェスティバルのディレクターたちが大勢出席していた。式典は中国らしく挨拶が延々と続き、欧米からのゲストたちは少しくたびれている様子も。内覧会を挟んで映像展示をおこなうサテライト会場でのレセプション、夕食会とつづき全てのプログラムが終わったのは10時半をまわっていた。
中国美術館での展示は、屋内4500平米と屋外2000平米の非常に大きなスペースを使っている。屋内会場だけでも国立新美術館でのメディア芸術祭の展示スペースの2倍以上にもなる。世界29ヶ国からのアーティストの作品が「身体を超えて」「感情的なデジタル」「組み換え型リアリティ」「ここでも、そこでも、どこでも」の4つのテーマに沿って展示されているが、作品ごとに割り当てられているスペースも広く、また作品の持つ世界観を丁寧に見せようとしていて非常に好感が持てるものであった。
展示作品は40点余り、アルス・エレクトロニカをはじめとする欧米の有力なメディアアートフェスティバルで、この数年話題になった作品も多く含まれている。印象としては6~7割ぐらいがそのような作品であろうか。あまり難解な作品は少なく体感的な理解しやすい作品が多く選ばれていた。世界レベルでの選りすぐりのメディアアート作品がずらりと並ぶのだから面白くないわけがない。日本だけでなく欧米でもなかなかこれだけの作品が揃うことは少ないのではないか。
そのような作品に混じって中国人アーティストによる作品や、日本や韓国などアジアからの作品がある。日本からは唯一エキソニモの『Object B VS』が出展している。エキソニモによると海外フェスティバルに出展していたのをキュレーターのザン・ガーが見て声がかかったとのこと。個人的には中国に来たのだから中国やアジアの作品をもっと見たかったというのも正直な感想。
日本からの展示は少なかったが、サテライト会場である天安門東側の北京皇城芸術館では、「文化庁メディア芸術祭」の映像作品が上映。中国では日本動漫(アニメとマンガ)は人気が高いが、今回のメディア芸術祭上映もきっと人気を集めることだろう。
全体としての感想としては、最近見たメディアアートの展覧会のなかでも規模的にも内容的にもすばらしかったのだが、何か物足らなさを感じたのも事実である。それは多くの作品が海外のフェスティバルなどですでに評価を受けたものであり、中国自らが新たな概念を世界に向けてプレゼンテーションするといったタイプの展覧会ではなかったからだと思う。
ただそのようなことは彼らも重々承知の上で、まずは中国の若い世代に世界レベルのメディアアートの現状を体験させ、中国ならではのメディアアートをアピールしていくのは次の段階でと考えているのかもしれない。
阿部芳久(CG-ARTS協会)
■媒体中国2008 (SYNTHETICTIMES-Media Art China 2008)
http://www.mediartchina.org/
会期 2008年6月10日(火)~7月3日(木)
会場 中国美術館(中国・北京)
■関連情報LINK
日本メディア芸術作品展2002(北京)
文化庁メディア芸術祭上海展2007(上海)
アジアからの文化力(第11回メディア芸術祭シンポジウム)
美麗新世界:当代日本視覚文化
2008年6月11日 (水) SYNTHETICTIMES-媒体中国, メディア芸術祭, 展覧会・イベント(海外) | 固定リンク
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